漫画

『チェンソーマン』第一部を読む

藤本タツキの漫画『チェンソーマン』について書く。 物語の中心軸 物語はマキマとデンジの関係性を中心に進行する。それ以外の登場人物はすべてこの中心軸に寄与するためのサブキャラクターに過ぎない。デンジにとってマキマは恋人であり母親である。同時に…

『ルックバック』を読む

藤本タツキの漫画『ルックバック』について書く。 この漫画は登場人物と読者の間合いが遠い。すなわち読者は、前のめりの姿勢になって主人公に感情移入するという読み方ができない。我々は漫画を読んでいる間、自分が主人公になったような気持ちでいることは…

『チェンソーマン』を読んで思ったこと

藤本タツキの漫画『チェンソーマン』を読んだ。実に面白かった。 内容は、とても文学的な物語だった。エンタメ色は薄い。画風もキャラクターデザインも物語も全然キャッチーではなかった。それでも物語の文学的な魅力が素晴らしかったので、僕はノックアウト…

『さよなら絵梨』を読む

藤本タツキの漫画『さよなら絵梨』を読んだ。それについて書く。 映画という芸術分野は、何が嘘か何が本当かというテーマについて深い興味を抱いているものだ。それは例えばタランティーノの『イングロリアス・バスターズ』や『ワンス・アポン・ア・タイム・…

『ゲンセンカン主人』を読む

つげ義春の短編漫画『ゲンセンカン主人』について書く。 この作品の物語にわかりやすい意味や論理といったものは存在しない。ともかくラストのコマの衝撃がすべてである。これはただ読者の心理にショックを与えることだけを狙いとして制作された漫画だと言っ…

『BECK』を読む

ハロルド作石の漫画『BECK』について書く。 『BECK』の中心的なテーマは、正と負の融和である。すなわち、うらぶれた物や汚い物、罪や影といった物と、きれいな物との融和である。それが細かい描写から小さなエピソード、物語の根幹にまでよく表されているの…

物語におけるエディプスコンプレックスについて

漫画『推しの子』を読んだ。面白かった。母親を溺愛する男の子が、母親を殺した主犯(と思われる)父親を探し出して復讐を企むという筋書きである。これは「父親を殺して母親を娶る」というエディプス王の話型を変形したものだと僕は受け取った。 映画・エヴァ…

『ドラゴンボール』の物語を考える2

前回の記事でピッコロ大魔王編を考察した。次はラディッツの襲来からフリーザとの闘いで終わるサイヤ人編について考える。 サイヤ人編では悟空の罪というものが強調される。このことは悟空が大人になったことと深い関連がある。一般的に言って大人になること…

『ドラゴンボール』の物語を考える

漫画『ドラゴンボール』の中心にあるものは、あらゆる願いを叶えるドラゴンボールという宝と、主人公の孫悟空である。彼の特徴は無欲なことだ。 「でもオラはべつに願いごとなんてねえから このじいちゃんの形見の四星球さえ手にはいりゃいいんだ!」 (単行…

『HUNTER×HUNTER』を読む

今回は漫画『HUNTER×HUNTER』について、思いつくままに書いてみることにする。まとまりのない記事になっている。 ルールを守る ゴンとヒソカはよく似ている。彼らはルールに対する執着心があり、それをよく守る。例えばゴンもヒソカもハンター試験に参加し、…

留保のない怒りはありうるのか

前回に引き続きヒストリエを考察していく。 ヒストリエのテーマは個人の自由と怒りである。この二つは不可分に結びついており、分けて考えることができない。どういうことか。 ヒストリエにたびたび見られる現象に、怒りによって組織が崩壊してしまう、とい…

『ドラゴンボール』における代替わりというテーマ

本稿では漫画『ドラゴンボール』のセル編の物語について解説する。セル編は単行本の28巻から35巻までに収録されている。 親子のヴァリエーション セル編にはさまざまな親子の組が登場する。まず冒頭にフリーザ親子が出てくる。次いでトランクスとベジータ、…

岩明均における母というテーマ

この記事では岩明均の作品に見られる母親というテーマを確認する。 二つの大きなエピソード まずは『寄生獣』のプロットを見ていく。この物語の中で一番大きな位置を占めている事件は、母親の身体を乗っ取った寄生生物に主人公が心臓を破られて、殺されかけ…