2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『ゲド戦記 影との戦い』を読む

『ゲド戦記 影との戦い』は傑出した文学である。それは感触として分かるのだが、僕はまだその全貌を掴み切れていない。理解できたという感じがしないのである。それでもいくつか分かったことがあるので、ここに書いてみることにする。 まず冒頭の「ことばは…

村上春樹の『ウィズ・ザ・ビートルズ』について

村上春樹の短編『ウィズ・ザ・ビートルズ』は、内容が優れていることはもちろんだが、何より見るべきなのはその文体である。それは読みやすさというものに全てを懸けた文章だ。彼がそのような文体を作る理由は簡単で、良い言い方をすれば平易な書き方をする…

『スワンの恋』を読む

プルーストは『失われた時を求めて』を書くに当たって、作中にいくつかの山場を設定した。大変長い物語を読むのは読者にとって苦痛であることを彼はよく承知していたので、彼らが最後まで興味を失わずに読み進められるよう、エンターテイナーとして盛り上が…

『天気』について

日本語の散文詩を色々読んできたが、その中で最も優れたものは西脇順三郎の『天気』だろう。 (覆された宝石)のやうな朝 何人か戸口にて誰かとさゝやく それは神の生誕の日。 この詩が一番であるということは直感で分かる。問題はなぜそうなるのかという理…