2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『カラマーゾフの兄弟』に反論する

『カラマーゾフの兄弟』は偉大な作品だ。でもその主張は間違いである。あるいは不完全な部分があると僕は考える。 ドストエフスキーは引き裂かれが間違った状態であると捉えた。だからそれの解決に向かって物語を前進させて、じっさいに終局させた。引き裂か…

僕にとっての最大のテーマ

僕にとっての最大の文学的なテーマは死だ。それに興味がある。ふりかえってみると僕の心に残っている小説はどれも死を中心に据えていた。『失われた時を求めて』、『カラマーゾフの兄弟』、『豊饒の海』などだ。 文学とは何だろうか。それは結局は物語だ。レ…

村野四郎の詩をよむ

我々のこころの中にはじつにさまざまな記憶が散らばっている。嬉しかったことや悲しかったことだけでなく、つまらぬことまで脳は憶えている。たとえば、猛スピードで走る車が目の前をよぎっていったときの印象だけではない。車がすっかり消え去ったあとの平…

『ドライブ・マイ・カー』を読む

村上春樹の『女のいない男たち』の全体については、すでに以前の記事で説明した。 本稿では、最初の短編『ドライブ・マイ・カー』の一部分をとりあげて説明する。主人公の家福が女性の運転について苦言を呈して、その後に男の運転について言及する箇所だ。次…