2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

僕の考える小説の歴史の仮説

いままで僕は小説の歴史というものを意識したことがなかった。それはとほうもなく巨大なもので、僕のような小者には到底理解できないに違いないと思いこんでいた。 でも最近はすこし考え方が変わってきた。別に歴史の全貌をとらえる必要はないのだ。というか…

嘘と疲労、そこからの回復ということ

嘘は文学において避けられないテーマである。小説は基本、嘘を書く。普通は嘘だけでほとんどを構築する。小説はそうした砂上の楼閣、雲のようなあやふやなものであるにも関わらず、読んだ人の心を動かし、確実に新しい何かを与える。それがすぐれた文学の在…

『天人五衰』の結末について

世の中には三島由紀夫の小説『天人五衰』のラストが理解できない人がいる。だから僕がそれをここで解説する。 まず、門跡の聡子が嘘をついていたり、記憶を忘れていたりすると思ってる読者がいるが、これはまったくの誤解である。それは聡子の外見からわかる…

『日はまた昇る』を読む3

前回の記事で重要なことはすべて説明したので、ここでは細かい所を述べる。 コーンとドン・キホーテ コーンはドン・キホーテ的な人物である。この小説の書き出しはコーンの人物描写となっているが、そこではいかにも『ドン・キホーテ』的な表現がなされてい…