2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

面白い小説を書こうと思わない

前回の記事の続きである。 僕はここ三年半ほど小説を書いている。その中で、面白い小説だけは絶対に書かないようにしてきた。僕は「面白さ」の成分を自分の小説の中から徹底的に追い出そうと努めてきたのである。そういう執筆の姿勢にたどり着いた経緯を本稿…

百合小説の同人誌を頒布します。

以前発表した『暗黒』を印刷し、本にしました。十五部を刷りました。 『暗黒』は約一万字の短編小説で、孤独な状況に置かれた少女が異形のパートナーを見つけ出し、自由を求めて奮闘するというお話です。大人向けの寓話といった内容で、本にはイラストがふん…

『失われたものたちの本』を読む

ジョン・コナリーの『失われたものたちの本』という小説を読んだ。面白かった。僕はかなり感動させられた。だからそれについて書く。 これは物語の本質とは何かということを喝破した者の手によって書かれた本だ。したがって読み解く側にも同じだけの知見が求…

物を考えるということについて考える

今日は物を考えるということについて考える。 もしもある人が一切走らないままの日々を長いあいだ送れば、普通は彼・彼女の足の筋力は落ちていくものだ。最終的には歩くこともおぼつかないぐらいになるだろう。この理屈は誰でも納得する。 ところが話題が知…

得意分野と不得意分野について

次の引用はスティーブン・キングの『IT』の序盤で、主人公ビル・デンブロウが猛烈な勢いで自転車を漕いでいる場面である。ビルは吃音の少年だ。 彼は走る。ハンドルにおおいかぶさって。けんめいに走る。 カンザスとセンターとメインの三叉路がみるみる近づ…