2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

二つの道

物語の普遍的な構造の一つに二つの道というものがある。楽な道と困難な道の二つが主人公の前に示されており、主人公はどちらを選ぶか逡巡するというものだ。 それは通常、どちらが楽でどちらが困難なのか、そしてどちらが正しくてどちらが間違っているのかは…

『ドラゴンボール』の物語を考える2

前回の記事でピッコロ大魔王編を考察した。次はラディッツの襲来からフリーザとの闘いで終わるサイヤ人編について考える。 サイヤ人編では悟空の罪というものが強調される。このことは悟空が大人になったことと深い関連がある。一般的に言って大人になること…

『ドラゴンボール』の物語を考える

漫画『ドラゴンボール』の中心にあるものは、あらゆる願いを叶えるドラゴンボールという宝と、主人公の孫悟空である。彼の特徴は無欲なことだ。 「でもオラはべつに願いごとなんてねえから このじいちゃんの形見の四星球さえ手にはいりゃいいんだ!」 (単行…

『納屋を焼く』を読む

村上春樹の短編『納屋を焼く』について考察する。 普通に読むと、納屋を焼いたことが原因となって「彼女」が失われたように読者には思われる。それはたいそう不思議なことであり、親しい友人が失われてしまったことの衝撃が印象に残る作品となっている。 こ…

『ダブリナーズ』の構造を読み解く

前回の記事からの続きである。 基調とカウンター 年齢構成 テーマと結論 ストーリー構成を概観する 基調とカウンター 次のような大きな三つの力が作中で働いている。 金銭による取引は上手く行かない。あるいは下劣な結果となる。 男女関係は上手く行かない…

『ダブリナーズ』を概観する

ジョイスの『ダブリナーズ』を柳瀬尚紀訳で読んだので、それについて書く。 この小説の中心を貫く構造はソーントン・ワイルダーの戯曲『わが町』に似ている。そっくりと言っていい。事件性の少ない市民の生活の描写が物語の殆どを占めており、最後にそれを死…