2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

影と鏡像

影と鏡像という文学のテーマがある。これはシャミッソーの『影をなくした男』という小説から開始されたらしい。明らかな後継作品としてホフマンの『大晦日の夜の冒険』がある。まずはこれら二作品について僕の持論を述べ、それから関連する作品についても言…

『日はまた昇る』を読む4

前回の記事で説明した通り、『日はまた昇る』は『ドン・キホーテ』的な小説にとって替わることを狙って書かれた。ドン・キホーテをなぞらえた人物であるロバート・コーンが滅んで、若者ロメロがあらわれるという物語構成にその意図はよく表現されている。 に…

『1Q84』を読む5: 『城』のアンサーとしての『1Q84』

カフカの『城』については以前解説した。 riktoh.hatenablog.com riktoh.hatenablog.com 『城』が抱える本質的な問題に村上春樹の『1Q84』は答えていると思うので、今回はそれについて説明する。 『1Q84』が『城』を参照していることが明示されるのは次の箇…