2024-06-01から1ヶ月間の記事一覧

人の話を聞く

前回の記事の続きである。 今書くべき小説は、自分を語った作品ではない。人々はそういうものにはもううんざりしている。人の話など聞きたくないと思っている。むしろ自分の話をしたいと思い、自分の話を黙って聞いてくれる人を探している。そういう時代に自…

小説を読みたくない

ある日、通勤に使っている駅の中に本屋ができたので、僕はその中に立ち寄ってみた。すると僕はすぐにその異様な雰囲気に気圧されて退場せざるを得なくなった。その圧力の正体とはなんだろうかと、僕は帰り道に思案してみた。そしてある結論にたどりついた。…

愚者の系譜

人類が誕生してから数百万年が経過した。そのあいだ、様々な人が生まれては死んでいった。その中でもっとも人類に貢献した人物は、僕の考えではたった一人に明確に定めることができる。 それはスペインの作家のミゲル・デ・セルバンテスだ。 彼は物語に関す…

『ドン・キホーテ後篇』を読む

『ドン・キホーテ』は『前篇』が主たる部分である。『後篇』は単なるおまけに過ぎず、読まなくても問題ない。むしろ読まない方がいいかもしれない。 『後篇』の理解の鍵は『前篇』にある。『前篇』の理解度が完全であれば、『後篇』を理解するのはかなり容易…

『ドン・キホーテ前篇』を読む2

挿話間の接続 『前篇』の序盤にはそのエッセンスが詰まっている。虐待されている羊飼いの少年をドン・キホーテが助ける話だ。弱者である少年をドン・キホーテが助ける。しかしこれはかえって雇用主を激怒させる結果となり、少年はよりひどい目に遭う。その後…