『二つの心臓の大きな川』を読む

ヘミングウェイの『二つの心臓の大きな川』を三回読んだ。それについて書く。 この作品は『日はまた昇る』同様にほとんど主人公の内面の描写に文章が割かれない。だが少ない心理描写に注目してみると、ニックはともかく森でのキャンプを謳歌しているようであ…

僕のやる夫スレ観

僕のやる夫スレ観は単純である。僕の書いた作品は面白いが、他の人が書いた作品はすべてつまらない。読むに値しない。それだけである。 何ヶ月かに一度、話題になるスレを開いてみてもいいと思うことがある。だが必ず20レス以内に読むことはやめてしまう。本…

ヱヴァンゲリヲン新劇場版を読み解く

これまで本ブログは二回に渡って『シン・エヴァンゲリオン』を読解してきた。本稿ではヱヴァンゲリヲン新劇場版を序から始めて最後まで読み解いていく。 一回目の記事 二回目の記事 エヴァンゲリオンは訳の分からない映画である。3作目のQから一体何がストー…

『ユニコーン』を読み解く

やる夫スレの作品に『ユニコーン』がある。これは完結した全てのやる夫スレの中ではもっとも面白いものだ。この物語は溢れんばかりの文学的な力を保持している。本稿ではこの『ユニコーン』を読み解いていく。 本作の中心的なエピソードは涼宮ハルヒから主人…

鉄道について考える

僕はVtuberの文野環ちゃんが大好きだ。そして文野環ちゃんは鉄道が大好きだ。それで僕も最近鉄道というものに興味を持ち始めた。好きにはなれそうにないのだが、知的好奇心を抱くことはできそうだ。そこで今回は鉄道というものについて、文学作品を中心に考…

『1Q84』を読む1: 繰り返される「ヤナーチェック」

『1Q84』の最初の青豆の章には、文庫版では24ページの中に「ヤナーチェック」という固有名詞が13回も登場する。この繰り返しについて本記事では解説をおこなう。 セルバンテスは『ドン・キホーテ』中の短編『愚かな物好きの話』において、小説の最も基本的な…

The VinesのGet Freeを読み解く

The VinesのGet Freeは優れた歌だ。この曲の歌詞のポイントは"I'm gonna get free"と"She never loved me"の繰り返しにある。 www.youtube.com ボーカルのクレイグ・ニコルズは一体何から自由になりたいのであろうか。おそらく彼は人類に普遍的なある牢獄か…

『ゲド戦記 影との戦い』を読む

『ゲド戦記 影との戦い』は傑出した文学である。それは感触として分かるのだが、僕はまだその全貌を掴み切れていない。理解できたという感じがしないのである。それでもいくつか分かったことがあるので、ここに書いてみることにする。 まず冒頭の「ことばは…

村上春樹の『ウィズ・ザ・ビートルズ』について

村上春樹の短編『ウィズ・ザ・ビートルズ』は、内容が優れていることはもちろんだが、何より見るべきなのはその文体である。それは読みやすさというものに全てを懸けた文章だ。彼がそのような文体を作る理由は簡単で、良い言い方をすれば平易な書き方をする…

『スワンの恋』を読む

プルーストは『失われた時を求めて』を書くに当たって、作中にいくつかの山場を設定した。大変長い物語を読むのは読者にとって苦痛であることを彼はよく承知していたので、彼らが最後まで興味を失わずに読み進められるよう、エンターテイナーとして盛り上が…