ヘミングウェイ

『日はまた昇る』を読む4

前回の記事で説明した通り、『日はまた昇る』は『ドン・キホーテ』的な小説にとって替わることを狙って書かれた。ドン・キホーテをなぞらえた人物であるロバート・コーンが滅んで、若者ロメロがあらわれるという物語構成にその意図はよく表現されている。 に…

『日はまた昇る』を読む3

前回の記事で重要なことはすべて説明したので、ここでは細かい所を述べる。 コーンとドン・キホーテ コーンはドン・キホーテ的な人物である。この小説の書き出しはコーンの人物描写となっているが、そこではいかにも『ドン・キホーテ』的な表現がなされてい…

『日はまた昇る』を読む2

ヘミングウェイの『日はまた昇る』を端的に言い表すと、これは「耐える」文学である。我々はこの本を通じて、苦しみに耐える人の在り方を学ぶことができる。実際に主人公は作中で、耐えること以外には何もしないのだ。何も事件は起こらない。物語と呼べるも…

『日はまた昇る』を読む

ヘミングウェイの『日はまた昇る』を高見浩訳で一度だけ読了した。 ともかく一度目の感想としては、まったく面白くなかった。名高い古典でこれほど退屈な読書体験は珍しい。一体作中で何が問題になっているのか、何を面白いと思えばいいのかさっぱり分からな…

『二つの心臓の大きな川』を読む

ヘミングウェイの『二つの心臓の大きな川』を三回読んだ。それについて書く。 この作品は『日はまた昇る』同様にほとんど主人公の内面の描写に文章が割かれない。だが少ない心理描写に注目してみると、ニックはともかく森でのキャンプを謳歌しているようであ…

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読む

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』はタイトルに「ハードボイルド」という言葉を含んでいる。本書中にヘミングウェイという言葉が出てくることを考慮すると、これはおそらくヘミングウェイの文学的スタイルを指した言葉だろう。具体的には『武…