金閣寺

かりそめの目標

物語は序盤で主人公になんらかの目標を示す。ただしそれは他者から与えられた、かりそめの目標であり、達成したとしても真の問題解決にはならない。主人公は物語の途中で目標を検証し直し、自己の本当の課題が何であるかを定義しなおさなければならない。そ…

二つの道

物語の普遍的な構造の一つに二つの道というものがある。楽な道と困難な道の二つが主人公の前に示されており、主人公はどちらを選ぶか逡巡するというものだ。 それは通常、どちらが楽でどちらが困難なのか、そしてどちらが正しくてどちらが間違っているのかは…

『金閣寺』の物語について

幼時から父は、私によく、金閣のことを語った。 『金閣寺』において父という存在は重要である。金閣寺の美について主人公に教え込むのは実の父親であり、それを表す文が最初に置かれているからだ。 作中に、父親的な登場人物や存在が多い。 実の父親 田山道…

『金閣寺』の文体について

三島由紀夫の『金閣寺』の文体について書く。 金閣寺の文体の特色として、文末が多彩なことが挙げられる。次に例を引用する。 寝ても覚めても、私は有為子の死をねがった。私の恥の立会人が、消え去ってくれることをねがった。証人さえいなかったら、地上か…