フィリップ・K・ディック

『ユービック』を読む

フィリップ・K・ディックの『ユービック』を読んだ。それについて書く。 この作品にはあらゆるところに「二つの力の対立」というモチーフが姿を見せる。ランシター合作社とレイモンド・ホリスの対立もそうだし、超能力者と不活性者の対立もそれに当たるし、…

『高い城の男』を読む

フィリップ・K・ディックの『高い城の男』を読んだ。面白かったので、それについて書く。 物語の名作というのは多くの場合、読者に対して優れた問いかけをする。もっと言うと、読了後にもやもやした気持ちを抱かせる。読者はその作品の登場人物や事件につい…

『流れよわが涙、と警官は言った』を読む

フィリップ・K・ディックの『流れよわが涙、と警官は言った』について書く。 本書のクライマックスは主人公タヴァナーがメアリー・アン・ドミニクと出会い対話をする場面である。我々はそこで愛情の持つ大いなる力に撃たれることになる。今まで自分がいかに…

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を読む

フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を読んだ。それについて書く。 物語は妻との不和で幕を開ける。物語中に主人公と妻の関係性は徐々に改善されていき、最後は妻が夫に示す誠実な愛によって幕となる。 リックとイーランの関係…

かりそめの目標

物語は序盤で主人公になんらかの目標を示す。ただしそれは他者から与えられた、かりそめの目標であり、達成したとしても真の問題解決にはならない。主人公は物語の途中で目標を検証し直し、自己の本当の課題が何であるかを定義しなおさなければならない。そ…