特殊な飢餓と適切な妥協

最近、村上春樹の『パン屋再襲撃』と『象の消滅』を読んだ。この記事ではまず『パン屋再襲撃』の一度目の感想を書こうと思う。 『パン屋再襲撃』を読み解く鍵は、一度目の襲撃の時に主人公がパン屋からもちかけられた取引にある。 主人公とその相棒はむかし…

『豊饒の海』と『百年の孤独』の共通点

共通点を挙げる 『豊饒の海』と『百年の孤独』には共通点が多く、興味深い。まずは思いつくままにそれらを列挙してみよう。 物語の冒頭から終盤まで出ずっぱりの登場人物が一人いる。彼・彼女は若い頃は影が薄く、物語の主人公を他の者に譲っているが、終盤…

比喩を剥ぎとる

パロディの例 パロディという表現技法がある。先人の作品を参考にして、それを自分流に書き換える形で引用するという手法だ。『1Q84』はこのテクニックの宝庫であるから、この小説から一つ例を取って見てみよう。 リーダーを暗殺した青豆は新築マンションの…

『ロング・グッドバイ』の三人の医者

探偵小説『ロング・グッドバイ』について解説する。本稿ではハヤカワ文庫の村上春樹訳を参照している。 三人の医者を評価するマーロウ 主人公である私立探偵のフィリップ・マーロウは、作中において三人の医者に会いに行く。彼らの内のいずれかが、捜索を依…