レイモンド・カーヴァー

分裂と統合・その2

岩崎夏海が喝破したようにすべての文学には分裂という問題がつきまとっている。 例えばレイモンド・カーヴァーの『ささやかだけれど、役に立つこと』では、前に考察したように、書き手の思いは幸福な人々と不幸な人々の二者に分裂している。またフィッツジェ…

村上春樹の文章の特長

村上春樹の文章の特長について思う所を述べる。この記事は村上春樹を読んだことがない人でも読めるように書かれている。 テーマに沿ったリズム 村上は作品のテーマと合致した文章のリズムを作ることが上手い作家である。例えば『 色彩を持たない多崎つくると…

『大聖堂』を読む

レイモンド・カーヴァーの短編『大聖堂』について書く。 この作品において盲人とはつまり読者のことを指している。小説家は読者に対してすべてを言葉で説明しなければならない。テレビのような分かりやすい絵を提示することが出来ないのはもちろんのこと、目…

『ささやかだけれど、役にたつこと』を読む

カーヴァーの短編『ささやかだけれど、役にたつこと』について書く。 物語の骨格 カーヴァーはこの小説を書く際に、普段は接近することのない二つの人間の層を念頭に置いた。ひとつは落ちぶれたみじめな生活を送りながら、親しい人もいない孤独な人達。もう…