生きていることに意味はない

これからの人類は「生きていることに意味はない」という真実とどう向き合っていけばいいか、その態度を問われることになるだろう。というか、もうすでに問われている。目に見える現象としては少子化がそれだ。 子供を作ることが不可能ではないはずなのにそう…

『僕の名はポイチョフ』の構想

僕は『カラマーゾフの兄弟』を敵視している。憎んでいると言っても過言ではないだろう。ドストエフスキーが現代に甦ったら、目の前までいって顔面に右ストレートをぶちこんでやらないと気が済まない。その程度には怒っている。 なぜ僕はこの作品を敵視するの…

いまの僕の生き甲斐

僕は死に瀕している。体は健康なのだが、心が死にそうなのだ。仕事はつまらなく、異性にはモテない。友人はまったくおらず、現実でもネットでも話し相手すらいない。趣味も特にない。だから僕はあらゆる意味で孤独だ。ついでに言うとお金もないので、現実的…

心という機械と小説の関係性

今日はより良い小説を書くために我々はどうするべきかという話をしたい。 僕の考えでは、人間の心は機械である。小説は人間の頭の上で実行することが可能なプログラムだ。人間の頭はインタプリタなので、ソースコードそのままの形である小説を実行できる。実…

いま魅力のあるコンテンツは何か

いま世間で流行っている一番魅力のあるコンテンツは、ライブ配信と炎上だ。ここで言う炎上とは、たとえば2023年の1月に起きたスシローのぺろぺろテロ、およびそれに集中した批判のことを指している。 いかなる小説も漫画もゲームも、この二大コンテンツには…

影と鏡像6

本稿では心の入れ替えという作用について記す。 セルバンテスのメソッドは典型的な入れ替えの例である。セルバンテスは人間の心が意識と無意識の二層に分かれていることを喝破し、かつそれぞれの層が抱えている感情を入れ替える方法を発明した。それがすでに…

『心は孤独な狩人』を読む

村上春樹の訳でカーソン・マッカラーズの『心は孤独な狩人』を読んだ。とてもいい小説だった。それについて書く。 本作の中心人物は聾唖のシンガーである。彼を軸に言葉というテーマがかたちを変えて幾度も語られている。多くの人物がシンガーに向かって言葉…

見るなの禁とエディプス・コンプレックスの共通点

最近、夏目漱石の『三四郎』を序盤だけ読んだ。そこで僕はどうにも驚かされた。まさに冒頭がエディプス・コンプレックスの話型だったからだ。列車内で見知らぬ年上の男性が、主人公の目の前で若い女性と親しげに話をするという形で二人は結合するのだが、し…

仲がよいことは醜悪である

僕は美しいことが好きである。醜い絵や音楽は嫌いで、美しい絵や音楽が好きだ。この趣向は芸術だけではなくあらゆる事象におよんでいる。人の歩く姿や話す声の響きや思考の方法にも善い悪いがあるというのが僕の考え方で、当然悪いものは蛇蝎のごとく嫌って…

善意とは何であるか

人は何をするにしても他者を害しうる存在である。道を歩くことひとつをとってもそうだ。他者の前に立てばとうぜん相手は通行できずに迷惑するだろう。あるいは人前で言葉を発することもそうだ。言う内容はもちろんのこと言葉遣いをひとつ誤るだけで人は相手…